AnAn[つかさと花子の物語]

始まりは1通の手紙でした。
『もうすぐ私のお誕生日です。皆様、お集まり頂きますようお願いしますわ。そうそう、私もうすこしふくよかなバストを所望しておりますので、皆様お家でもっとも乳の出の良い乳牛を持参して来て頂きますよう、お願いしますわ。スーザ』
スーザお姉さまの、お誕生日会のお誘いの手紙でした。
しかし、貧乏なわたしの家にはそんな乳牛なんか居ません。
居るのは小さい頃から寝食を共にしてきた、肉牛の花子だけ。
困り果ててしまいました。

でも、スーザお姉さまのお誕生日会に行かないわけには行きません。
もちろん、乳牛を連れて行くのも絶対です。
そこで、わたしは苦肉の策を取ったのでした。

白と黒のユニポスカで花子の全身を、あたかも乳牛かのように塗りたくりました。
自分ながら良い出来栄えでした。どこからみても乳牛です。
「これで安心してお誕生日会に出席できるよ…」
今思えば、そこに油断が合ったのかもしれません。

お誕生日会の会場に行ったのですが、誰一人として乳牛を連れていません。
あれ? お誕生日会の会場はここだと思ったんですけど…
「牛祭はここですか〜?」
聞けども聞けども、みなさん怪訝な顔をするばかり。
雪お姉さんに至っては、なぜか笑われてしまう始末でした。

そして、さ迷い歩く事一日。
みなさんが乳牛を連れている場所を、ついに見つけました。
目にうっすらと涙を浮かべながら、良かった…と心から思いました。
ですが、みなさん、なぜか奇異の目でこちらを見ています。

すると、大勢の中から、ほた姉さまがわたしに告げてきました。
つかささん、あなたの連れてるの…肉牛じゃない?

慌てて振り返ると、なんということでしょう、花子の色が落ちていました!
あぁ、やっぱり水性マーカーだったのがいけないのでしょうか。
どうみても乳牛には見えません。
そして、そこへスーザお姉さまがやってきたのです。

「あら、つかささん。あなたはなぜ肉牛を連れているのかしら? それはわたしの胸への当てつけかしら?」
「そ、そんなことはありません。それにスーザお姉さまだって、シャロンお姉さまに比べたら…」
「おだまりっ!! 乳牛を連れてこないで肉牛を連れてきたら、『裏ドラが一生乗らない呪い』を掛けますわよ!」

その呪いには、わたしは既に掛かっている気もしますが、やっぱり肉牛を連れてきてしまった大阪のエドお姉さまが大ピンチです。
そこで、わたしは素晴らしい案を閃き、こう言いました。
「は、花子はコーヒー乳牛なんです!!」

これで、完璧だと思いました。
もう、一点のぬかりも無いと思いました。
でも、スーザお姉さまは、わたしにこう言ったのです。
「なら、コーヒー牛乳を出してみせなさい。」と。

できませんでした。
花子は肉牛ですから、お乳が出ません。
でるのは、わたしの涙だけでした。
「ふんっ、軽々しい嘘をつくものでは無くってよ。」
スーザお姉さまはそう言って立ち去ったのでした。

翌日。スーザお姉さまの誕生日の後夜祭が行われました。
お姉さまをお祝いする、キャンプファイヤーが行われていました。
みんなで楽しそうにしているのを遠くに見ながら、わたしと花子は遠くでぽつんと佇んでいました。
「花子…。色を塗ったり、長い間連れまわしたりしてごめんね。」
わたしは、心から花子に謝りました。
すると、花子はこういう風に書かれた書き割りを取り出しました。
『僕こそ、お乳を出すことが出来なくてごめんね。』
なんと、花子は僕っ子でした。
『せめて、最後につかさちゃんにご奉仕するもー』
そう書いて、花子は猛然と走り始めたのです。
キャンプファイヤーに向かって。
「は、花子、花子〜!!!!!」
わたしには止められませんでした。

花子はそのまま、キャンプファイヤーの火に焼かれ、良い匂いが漂いました。
わたしはただ、目から涙、口からよだれをたらす事しか出来ませんでした。
「そうだ、止めなきゃ。」
わたしは慌ててキャンプファイヤーの元に行き、花子を火から出しました。
ウェルダンでした。

涙を拭いて、わたしは元花子を料理する事に決めました。
これで美味しい料理を作って、スーザお姉さまをぎゃふんと言わせる。
それが、花子への弔いだと思いました。
選択肢は5つしかありませんでした。
「ケーキ」「パフェ」「ホットケーキ」「ハンバーガー」「ペロペロキャンディ」です。
スーザお姉さまといえば、パフェな気もしたのですが、どう考えても牛肉との相性は良くないので、ハンバーガーをチョイスしました。
そして、料理完成。
スーザお姉さまに食べてもらう事になりました。
「お姉さま、これが花子が命を尽くしてまで作ったハンバーガーです!」
お姉さまは、ハンバーガーを口に運びました。
そして、一口食べるとこう言ったのです。
「うむ、確かに肉は最高なようだ。だが、パンがその力を受け止めて切れてないな。」

わたしは思わずツッコんでしまいました。
「……………雄山かよっ!!」

あれ? これがオチ?

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この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、プロアンサー、牛とは一切関係ありません。
あと、推敲がめんどくさくてだだ書きなので、細かな部分はご容赦を。